道の途中/岡部淳太郎
 
誰もがみな
道の途中だった
そして誰もがみな
人に気づかれることなく歩いていた
人に見られていると
そう思うのはあさはかな傲慢であると
時の風が教えてくれた
深い
森の奥から道へ
われわれは思い出すこともなく歩いている
ただ手の届く
そっと撫でられるだけの過去を
重荷に負って
人に聞かれることのない
息を吐く
灰色のねじれ
骨の形をした疲労
人に知られることのない旅だった

いままでも
これからも

人に知られることのない
それは悲しむべきことであるか
人に知られることのない
そのことの快楽
涸れる喉
涸れる空
歌はもはや
われわれの口から
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