夜の手/木立 悟
 



眠る光を背に
夜を見る
燭台の木々に
風が点る


道のにおいが漂ってくる
逃げも隠れもしない水音
細やかにひと粒ひと粒と
葉の上に置かれる鉱の冠


枝から枝へ
ざわめきはわたる
雨はゆるりと丘をのぼり
土のなかの骨をたどる


光の魚と光の鳥が
水面の曇と月をすぎ
影が湧きでるところから
またたく音は現われる


外から内を照らされて
内から外へ夜は流れる
あふれつづけ 道を削る火
満たされぬまま 夜へ向かう火


夜にさしのべられた手が
夜の扉に触れるとき
子らは月あかりに駆け出して
背より高い原にまぎれる


荒れた羽の鳥がひとり
雨のまぶたの片方を閉じ
夜の手に生まれる冠を
子らの髪にのせてゆく








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