首の後ろ側/アンテ
 

シャワーは
なかなか熱くならない
歯がカチカチ鳴る
なんでこんなことになったんだろう
鏡のなか
寒さに背を丸めた女が
涙でにじむ
冷たい水が排水口に吸い込まれていく
湯舟につかるわけにはいかない
温かすぎて
二度と出られなくなってしまうから
ようやくお湯が出はじめる
首の後ろ側
後頭部のすぐ下にシャワーを当てる
割り当てられた道順をたどるように
お湯が肩から胸を伝って
下腹部を濡らして床に落ちる
身体が温まる
あるいはそう勘違いする
五感を騙すことなんて簡単だ
シャワーの微妙な角度で
お湯の大半が背中へ移る
あるいは顎を伝って滴る
なにかがうまくい
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