ふひゅーんあおあお/石川和広
 
夕景風が鳴る
ふひゅーんあおあお
さざめくざさささ

ふひゅーんあおあおは彼方からの信号で
信号を窓の中から感じている僕は
木のように揺れている頭のなかを巻いて

片頬をうちぬかれたおじいちゃんと歩いていた畦道
たんぼの端に立っているお墓はカビていた
暗い陰ゆらめいて

風の鳴る音で思い出す
あの曇った空が永遠に続きそうな感じ
なぜか戦争の影
おじいちゃんは戦争に行く前貨物船に乗っていた
船乗り
船倉の影

おじいちゃんは死んだように昼寝
畳の上をふひゅーんあおあお

ふひゅーんあおあおは僕の頭のなかを
吹き荒れて時間を巻き戻そうとする
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