小旅行/
紫音
張り詰めた空気の中で
深呼吸をしながら溜息を漏らす
窓から見下ろす路地の脇の
錆び付いた自転車のサドルに
視線を合わせる
凍り付いた言葉の奥で
脈拍を測りながら吐息を漏らす
しっとりとした肌触りの
部屋の明かりが
鏡台に青ざめたボクを映し出す
遠く逃げ出した土地の片隅で
幻想を回想しながら
熱帯にそびえる高層リゾートの
アンティーク家具が浮ついた部屋で
シャワーの音が虚しく響く
見失ったのは
ボク
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