八月の海鳴り/嘉野千尋
 
を知っていた


  君は今でもあの海の名前を覚えているだろうか
  二十二の海と、一つの大洋
  晴れの海から、静かの海へ
  君に宛てた幾つもの手紙
  嵐の大洋では、今夜も稲妻が輝いているだろう
  
  
  何故だろう
  地球の浜辺にいるのに波音が遠い
  あれほど焦がれたこの星にいながら
  僕はずっと月を見つめている
  時おり、月の浜辺で君と聞いた波音が聞える
  それは遠く近く、寄せては返す
  あの八月の、月の歌声

  


戻る   Point(16)