プラトニックの充実なんて/野島せりか
プラトニックでも
自分に素直であれば
満たされると思っていたのに
彼に抱きしめられた瞬間
確かに 私は
物質的なものを求めていた
こんな事をしたのは
私のブラウスのボタンを
なんの気がねもなく
外して欲しかったから
あらわになった素直な気持ちと
火照った顔を背けるように
シーツの中に包まり込む
プラトニックでも
自分に正直であれば
充実していると思っていたのに
彼の背中で聞いた鼓動に
確かに 私は
安らぎに近いものを感じていた
プラトニックの充実なんて
単なる自己満足の嘘っぱち
彼が何を望んでいるかなんて
分かりきっているから
訊ねるたりなんかしない
目を逸らしながら
片隅で見た彼の表情
こういうのが好きなんだね
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