旅を終える朝に/服部 剛
 
園から帰ったら、また遊ぼうね」

(おじちゃん、今日帰るんだよ)

という言葉をぐっと飲み込み

「また遊ぼうね」

という言葉をそのままに無垢な瞳はすいこんで
くるりと背中を向けて
キティーちゃんと手をつないだまま居間へと走った

階段を下りてきて

「行くよ」

と言うママの背中についてゆき
窓の外の車の助手席から僕を見つけて
小さい手をふると
動き出した車は
田んぼと田んぼに挟まれた一本道の向こうに走り去った

朝食を終えた僕は
荷物をまとめようと上った階段から
がらん とした居間を見下ろすと
キティーちゃんは少し退屈そうに
消されたテレビ画面の前に座り
黒い瞳に小さい光を浮かべていた 


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