夏休み/たもつ
 
ていたが
僕らは本当の祈りを知らない
上り坂にさしかかり
バスは一気に加速度を増す
はるか空を目指して
降下
していく

と、街に人が戻る
交差点で信号待ちをしている男たちの襟首は
垢で薄く汚れ
学生たちは机の上に課題を放置したまま
今という一瞬に余念がない
どこかのベランダでは
洗濯されたばかりの白いシーツが
ふわり膨らむ
風が形になる
隣で小さな寝息をたてている君
昨夜、街を捨てようと言ったのは
どちらからだったろう




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