遠い猫/チアーヌ
いた。南側に開かれた大きな窓からは市内を縦断する大きな川が見えた。天気の良い日は、わたしは洗濯物を干しながら、飽かずに川の流れを眺めていた。
こどもはなく、夫もわたしも働いていた。生活は潤っていて、問題は何もなかった。
ある日の夜、わたしはふと目を覚ました。寝つきの悪いわたしは、ちょっとした物音でもすぐに目覚めてしまうのだった。
カサカサカサ、にゃーん。カサカサ、カリカリ。にゃーん。
猫がいる。家の中に。猫がいる音がする。どうしてだろう?
わたしは暗闇の中でむっくりと起き上がり、耳を澄ませた。隣か、上下階の音かと思ったのだ。しかし、ここは鉄筋コンクリートの分譲マンションで
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