恋愛死/恋月 ぴの
 
誰かに
みせつけるように
差し出した
蒼白い手首に残る
ためらい傷一筋
取れかかった瘡蓋
赤い傷口に
鈍く光る刃先

何故に
ためらったのか
死の際で垣間見た
希望と言う名のまほろし

もしくは
生きる本能に妨げられて
こめたはずの力が
するりと抜けて

あるいは
都合の良い言い訳を
はじめから
用意していたのか

死に損なった
この街で
うらべだらけの
ぬくもりに抱かれ
絶望と言う名の
朝がはじまる

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