儀式/葉leaf
。私は左手を挙げて、「鍵を産む者」を呼びとめる。私の兄弟は頭からくずれてゆく、今日もまた極地へと旅立ったのだ。螺旋をえがきながら降下するそれ(ヽヽ)をめがけて、私はからの盃を投げつける。盃は空気のにごった流れに侵食されながらしずかに形をうしない、ひとかけらの雪になる。最後の雪に。雪のすべってゆく軌跡を追うようにして、それ(ヽヽ)は私の前へと着地して、七つの瞳の色をなめらかに推移させながら、私に鍵束を差し出す。それは、まだ夢見られたことのない断崖からころがり落ちた砂岩の、偶然の意思によって生成された鉄製のこずえ。人が人を恋う瞬間に、暗い溶液の中に凝固した枝分かれした磁性体。数多くの気まぐれを素材にして、それ(ヽヽ)の城邑にて生み出された符合だ。一つ目の扉を開けると星がめぐった。二つ目で生き物が目覚めた。三つ目で木々が芽吹いた。四つ目で人が死んだ。五つ目の扉の前に来て、私は銃で撃たれたかのようにためらった。そして五つ目の扉を開けると、二人目の私が現れて、私を殺していった。
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