不安/鮎川
 
橋の下には
川が流れている
たくさんの落ち葉の側には
木が立っている
枕の上には僕の頭がある今、
天井の片隅からきみが僕を見ている
庭で猫が鳴いている
ああ、僕は死んでいるんだね
暗い天井の細かい木目にまどろんでいるふりを
先刻から僕は、眠ろうとする僕を
演じているんだね
ああ、鏡にはふすましか映らない
夜、風が冷たいね
ねぇきみ
僕に何も言わずに
死ぬなんて
ひどいね
猫が、鳴いているじゃあないか


戻る   Point(4)