五十三回目の夏に/狸亭
の二人の姉達も
いまではそれぞれに嫁いで
平凡な暮らしそれにしても
いつまでも都会に独り暮す
家族のこと気になるらしく
なんども結婚話を繰り返す
女ぎらいのぼくは二重人格
通勤時のラッシュアワーの
地下鉄で見かけた人がいる
優しそうな顔で肥り気味の
あっと思った「先生がいる」
見れば見るほど先生の風貌
彼電車の中ではいつも読書
全身が熱くなりめぐる思考
ずきずきとうずく固い局所
ある朝階段でチャンス到来
寄り添った男の前で若い女
脚を踏み滑らせて愛想笑い
「危ないね」と仕掛ける罠
その日からは毎日待ち伏せ
朝な朝な「おはよう」挨拶
ごく
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