満開の乳房・輝ける美酒/黒田康之
その女の乳房は
四月の桜のように満開で
うすももいろの
空にも恥じない明るさである
肌色は世界に開き
柔らかな匂いで部屋は満たされる
私は小さな白磁の杯で
そうして
お前の笑顔を嗜みながら
しぼったばかりの美酒をまた飲む
酔いはちょうどつむじのあたりから脳天に染み込みはじめ
大きく投げ出された女の足のように広々と広がってゆく
夕方の風は涼を乗せて
私たちの喜びを乗せて
世界に広がる
喜びは
雛鳥の泳ぐ波紋のように
夕暮れてゆく空気の中で
ダンスを踊る
美酒は尽きない
次々と飲む
女は尽きない
ひしひしと抱く
この一瞬の幸福が千年の私を笑わせ
この一瞬の幸福が千年のお前を笑わせる
そのとき私の心はお前の心と
なによりも見事な
和音を奏で
そのとき私の心はお前の心と
なによりも見事な
踊りを踊る
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