イーサ・ダラワの七月の浜辺/嘉野千尋
ワロが抱くのは
誰にも届くことのなかった浜辺の言葉
あの夏の、あの午後に
麦藁帽子のあのひとが、愛しい人に贈った言葉
だけど誰にも届くことのなかった言葉
イーサ・ダラワの七月の浜辺で
ワロは流れ着いた言葉を集めて歩く
そして小壜はいっぱいになり
ワロは灯台守の仕事に戻る
日が沈み
灯台の灯がゆらゆら揺れる
窓辺に置かれたワロの小壜を
灯台の灯が今宵も美しく輝かせるので
揺れる光に導かれ
イーサ・ダラワの七月の浜辺には
愛しい言葉が流れ着く
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