イーサ・ダラワの七月の浜辺/嘉野千尋
 


  イーサ・ダラワの七月の浜辺には
  遠い国の浜辺から
  いつのまにやら波が攫った
  いくつもの言葉が流れ着く
  

  嵐の後にそれを集めて歩くのが
  灯台守のワロの仕事
  ワロは今日もガラスの小壜を片手に
  イーサ・ダラワの七月の浜辺を
  てくてく てくてく
  

 (流れ着いた言葉がどんな姿をしているかって?
  それは秘密だとワロは答えるだろうけど
  わたしはワロの小壜の中身を知ってる
  そう、あれは…)


  ワロは小壜の中に桜色の貝殻をひとつ
  それから声を上げて泣き出した
 「かなしい、かなしい」
  ワロ
[次のページ]
戻る   Point(14)