イーサ・ダラワの七月の浜辺/嘉野千尋
イーサ・ダラワの七月の浜辺には
遠い国の浜辺から
いつのまにやら波が攫った
いくつもの言葉が流れ着く
嵐の後にそれを集めて歩くのが
灯台守のワロの仕事
ワロは今日もガラスの小壜を片手に
イーサ・ダラワの七月の浜辺を
てくてく てくてく
(流れ着いた言葉がどんな姿をしているかって?
それは秘密だとワロは答えるだろうけど
わたしはワロの小壜の中身を知ってる
そう、あれは…)
ワロは小壜の中に桜色の貝殻をひとつ
それから声を上げて泣き出した
「かなしい、かなしい」
ワロ
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