遭難/かのこ
うん。
あのさ、ペットボトルを傾けるとわざとらしい色をした液体は
水平方向に、傾きます。ように、見えます。
完璧にね。
ああ、文句の付け様もなく!
従うことにも、騙されることにも
悔しがる必要などない。ね。
そうだろ。その通りさ。
ベッドに横たわって
そこから見える景色にはもう飽きた。
何の色もないさ、何の匂いもない。
時間の流ればかりが
私を腐らせる。
部屋から出ても
脳みその中だけ眺めつづけて
ずっとずっと、傾いたまま
首から上、傾いたまま
船酔いでもしているかのよう。
けれど何に従っているのだろう、私は。
己の弱さや、怠惰。
何に騙
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