書く動力 6/Dr.Jaco
開する。「言葉さん」が外へ橋渡ししてく
れる局面が、モチーフが近寄ってくる=モチーフを手繰り寄せる「愛」だとすれば、
「言葉さん」が沈黙し、ひたすら皮膚の内、血流に向き合う場面が「憎しみ」と称さ
れる。全体に拡大しながら局部的に収縮を止めない空間は宇宙と呼ばれているが、そ
んなリズムセクションに踊らされるヴォーカリストのようなものだ。
逆に、愛憎のフラフープ(前回参照)は、全体に収縮しながら時折爆発的な拡大を見
せる。詩を書くことは、そびえる御神体としての山々になぞらえて、他者の皮膚を見
下ろし、その内に侵入したいという欲望の文字列なのかもしれない。
自らの内部に引きこもることと、他者の内部に潜入したいという妄想の位置対比、逆
転が連続することで動力が生まれ、引きずられていく。
やがて不可能の象徴を「神」と言ってごまかすのは、容易に察しがつくことだ。
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