塔の上でワルツを踊る/いとう
雲はかすかに薄い。満月はわずかに遠い。星
たちは月の輝く姿に目を細め身を寄せ合いな
がらその眩しさを囁く。塔の下ではいくつか
の波が押し寄せる。浸食は彼方の記憶。崩壊
は遥かな追憶。廻る者と廻られる者は対とな
って塔の上でワルツを踊る。
完全な輪廻。不確かな手触り。塔の中では忘
れられた者たちの忘れられた祝宴が繰り広げ
られ、忘れられた約束が生まれている。海峡
は水平線の彼方。水平線は闇の彼方。月の恩
恵も懲戒もそこにはない。届かない。新たな
契約は陰暦の隙間で交わされている。
もうすぐ凪が来る。終焉はわずかに遠い。塔
の機能は停止に向かい直進するが、塔の
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