吉岡実(奇怪な絵画)/岡部淳太郎
 
ある。間に挟まれた七つの章も、同じような奇怪なイメージで埋めつくされている。吉岡実はよく難解な詩人と言われたが、ただ詩で絵を描く、それも奇怪なイメージを描くことに固執していたのだと考えれば、難解さも多少やわらぐだろう。これは言葉によって描かれた絵であり、そこに意味を求めようとしてはいけないのだ。
 こうした作風はその後の『紡錘形』『静かな家』でも受け継がれている。またひとつ『静かな家』から、奇怪で理解不能な、それでいて妙に印象に残る詩を引く。


{引用=水中の泡のなかで
桃がゆっくり回転する
そのうしろを走るマラソン選手
わ ヴィクトリー
挽かれた肉の出るところ
金門のゴール?
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