移民/カンチェルスキス
通り魔が居眠りする路上で
おれは通り魔を殺した
こわくない
おれはたった一人の人間だ
心臓と肺を持つ
たった一人きりの人間だ
長い長い
疲労感と倦怠感、頭痛と震えに
鈍器で殴打された後のような全身の痛み
口に押し込められた角材のような氷が
けっして溶けることはなかった
電信柱の軋みに耐えられなかった
姿を見つけたおれは
殴りかかるより先に
そいつの生命を停止させていた
いかなる理由も痕跡もなく
殺されたかもしれない
殺すかもしれない
殺されないかもしれない
殺したのかもしれない
かき混ぜた重油
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)