思い出のひと/本木はじめ
 
亡霊ときみの名付けし少年の漕ぎしブランコ揺れている初夏


遠ざかる白い小舟の行く先を流れる水や風に聞く午後


紫陽花を抱きしめているパレットにきみの瞳の色を混ぜつつ


防波堤越えてあなたの元へゆく嵐の夜の大波のごと


台風がくればぼくらは飛び出して風雨のシャワーを朝まで浴びる


びしょぬれのきみの睫毛の水滴に僕のこころの惑星は消ゆ


怖れてるきみがすべてになることをきみがすべてじゃなくなるときを


ためらった瞬間、迷ったその瞬間あなたはすでに思い出のひと


きみが言うさよなら聞いて遂に僕は背後の巨大な夕陽に気付く


思い出のきみが乗ってるブランコが揺れてる初夏の無人の公園



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