三日月につらなる思い出もある/服部聖一
 
おとといの昼に食べたアジのタタキとみそ汁とご飯
きのうの昼に食べたサラダと牛バラ肉の焼き肉とみそ汁とご飯
きょうの昼に食べた白金豚と万願寺トウガラシの手打ちパスタ
きょうは、まだ白いご飯を食べていない

時計は回り続け 忘れ物を取り返すことが出来ない
ひとみの黒は みな同じように見えて
一年前になくしたメガネの赤を 思い出すことが出来ない

雨を生まない深い青の空色が夏に続いている
ねむいまぶたの上に 居のこりの仕事を残して
白い月と雲を探すのだけれど
きょうはあいにく 見つけることが出来ない


そのあいだに
白いご飯を食べ
チキンカツを食べ
和風ステーキを食べ
白いご飯を食べ
お茶を飲み 水を飲み さけを飲む

生まれなかった子供にも名前はあるし
死んでいった犬にも名前はある
毎日 雨が降るように白い米の粒を食べ
日めくる明日に
空を見上げ 白い月を探すのだ
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