こわれた背筋/カンチェルスキス
 


 
 
 散弾銃の響きを聞きながら
 今日も眠る
 僕は殺されるかもしれない
 

 マンホールの下に
 うずくまっている
 谷底に沈んでいる
 フタをかぶされて
 沸騰し
 溶けてゆく自分の足を
 眺めている
 

 僕の心には何も書いてない
 こぼしたコーヒーのしみが
 少しある


 朽ちかけた林檎に
 入り込む
 川の近くの草むらに
 放置されて
 古タイヤと同じ
 
 
 白紙を解読するしくみ
 こぼしたコーヒーのしみを
 拭うしくみ
 長い長い睡眠の後で
 飲む
 冷たい水
 僕の心には何も書かれてない
 

 
 肘掛けのない椅子で
 もてあました両腕を
 だらりと
 垂らしている





 僕は殺されているかもしれない





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