雨が積もると/霜天
 
玄関のドアを引く
駆け込むようにして進入してくる朝は
少しだけ暗い白
今日も天辺まで積み上がった世界で
濡れたままの人たちが歩いていく

傘を忘れたわけでもなく
濡れることに気付かないわけでもなく

ただそこで、息をしている
繰り返しの雨の音


例えば、で伸ばした指先が
順番の季節をなぞっていくと
座り込んだ僕らのいた頃は
積もった雨がこの街の遥か上まで
今にもあふれそうになっている

指先はいつもそこで止まる
溺れないようにと静かにもがくのは

いつだって僕らの方だったような
なぞられる毎日はカレンダーの色を真似て


静かに息をする
ただそれを繰り返す
どこまでも積もった雨の底
どこかで零れる音が聞こえる
僕らは潰されるわけでもなく
ほんの少しの重みを感じながら


雨が積もると、街は変われない
ここから、すべてが零れてしまうまでに
靴を乾かさないと、いけない
戻る   Point(12)