花模様スケッチ/千月 話子
日目のウ
二日目のス 三日目のバ・・・
音が外れてスの音がくすぐったいと
羽根を広げた葉脈が、かすかに震える
七日目のウは もう飛び疲れて
眠る彼女の足先で眠る
茎の根元になって
わずか七日間の広い空を抱きしめ眠る
飾り花
チョコレートにサイダー
傍らから シャンパーニュの少女
甘すぎて喉元から歌う
裏声の白い花のワルツ
発酵する葡萄ジュースから上昇した
子供の甘い香りだけ残して
はじける泡の可憐な粒
手のひらに握って
眠る彼女の指先で眠る
繰り返す夢の継ぎ目で
開かれる度 生まれる
カスミソウのまばらなバランスで
花瓶へ
眠っているの 起こさないで
敷き詰められた木床の上で
やがて生まれる 少女の絵画
低空で飛ぶ 蝶の微風添えて
爪先立ちで遊ぶ 花のワルツ
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