朝水/木立 悟
 



風を含んだふくらみが
道からひとり飛び立とうとしていた
波は空を洗いつづけて
地平に着いては羽になった


指は闇に触れていき
倒れたままのかたちを知る
波を無色の魚に変え
月は泳ぎつづけている


空にも地にも垂直に
まわりつづける水の音たち
道へ降りそそぐ粒の重さは
小さな羽に満ちている


羽はつもり
光に変わり
雨上がりの寒さには
指の跡が残されてゆく


ふくらみはまだ飛び立てない
霧の塊と塊の間を
光と畏れに見失いながら
ひとり月を追いつづけている


朝を銀にするものが
咽に指をあてている
あやなす流れ あやなす痛み
あやなす声を紡いでゆく






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