雲の上のレタス/本木はじめ
思い出の森をさまよう僕はもう少年時代の歌詞から遠い
おにぎりの形している山登る今はまだまだ海苔の真ん中
紫陽花に紋白蝶の眠る午後わたしが汚れているのが解る
花粉から誘われている夏の森あなたの失くした枕を探す
ライオンとお茶をしているサバンナで夢なら早くさめてほしいな
凍らせてあなたの指をシャリシャリと食べてみたいな夏は夕暮れ
否定するあなたのくちびる真っ青でここから先のことは聞けない
枕からあなたの昨夜見た夢がはみ出している巨大なマグロ
衰えてゆくのがわかるこの部屋もわたしのような顔をしている
森の中そしてあなたはいなくなる熊の着ぐるみだけを残して
雲の上のレタスを食べにゆきましょうすべての望みをあきらめた朝
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