世界を漂う指先からこぼれる音符/黒田康之
きみの歌はどこまでも聞こえる
きみの歌は世界中に響く
きみは魂を振るわれて鳴く
世界でただひとりの小鳥
花の影から
雲の上から
草の切れ間から
きみの歌声はとめどなく地面を揺らし
この空間を埋め尽くしてゆく
きみは魂から歌うから
きみの音はいつも澄んで
僕の魂を染め上げてゆく
そのとき
僕は地面になり
空になり
星になり
宇宙にもなる
そうしてきみは
そんな僕をいつも支える大きな柱であり続ける
きみの歌には何よりも素敵な香りがあって
きみの歌には誰よりもあたたかい光がある
さあ歌って
もっとたくさんの音符を
きみの住むこの街から
きみの住むこの時間から
とんでもなく過去に住む僕へ
果てのない未来に住む僕へ
すべての世界に偏在する僕へ
響かせておくれ
僕はきみの匂いのするジャケットを
君の香りのする肌をまとって
こうして君に会いに行く
朝目覚めると
この世の小鳥という小鳥が
きみの歌を歌っていた
すべての木々が
すべての草花が
きみの香りで歌った
いとおしいいとおしい
僕の世界の全部の根源のような微笑をもって
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