「日本文学盛衰史」書評/佐々宝砂
あたしの大好きなドアーズだわ、透谷ってばあたしと趣味が同じだったのね、嬉しいわっ♪……いや、話が逸れた、これはこの本の本筋ではない。こういう個人的なヨロコビも、この本の楽しさのひとつではあるのだが、この手の小さいことにかまけてると全然書評が進まないので、ちょっとはしょる。
長大なこの小説の第一の圧巻は、田山花袋が『蒲団'98・女子大生の生本番』なるAVの撮影に参加する章である。「露骨なる描写」を求める田山花袋と、とにかくオカズになるものを撮ろうとするAV監督……確信は持てないのだが、この両者の関係は、対比ではない気がする。ただまぜこぜに並べられた明治の文豪とAV監督の姿。田山花袋が貶められ
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