言葉の距離/嘉野千尋
誰かの記した言葉を読むとき、自分自身がそっとその言葉の傍らに寄り添っているような気がすることがあります。詩集に頬を寄せるわけではないけれど、言葉のひとつひとつに愛しささえ感じるような想いで、その言葉の並びを目で追っている瞬間というものが、確かにあって…。
けれどもときどき、距離を測り損ねて自分自身を傷つけているのではないかと思うこともあるのです。それは、足の小指を扉や机の角にひっかけて顔を顰めるようなことにも少し似ているのですけれど、測り損ねた距離に最後まで気付かないこともあるのだということに、今ではわたしも気付いてしまいました。(2005.1.9)
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