贋者アリスの洞窟の冒険/佐々宝砂
 
ていてはだめ!

ひゅいひゅいひゅい。妙な効果音とともにしらばっくれた顔して影のうすいホムンクルスがあらわれる。ちっちゃいから役に立たないけれども、それでもこいつもここの住人なのだから適度に相手してあげましょうとおもってあたしはホムンクルスを指のない手で抱きとる。ホムンクルスは喜んであたしの胸に放尿した。これでよい、これでよいのだとあたしは溜息をつきホムンクルスの熱い尿をなめとる。

羽根は生えたのだしこれで役者は揃った、準備は整った、ゆかなくては! でも、どこへ? ここは閉ざされた洞窟の中だ。明るい青空も、走り回る生き物も、あたしの羽根も、すべては鱈の目に過ぎない。でもそれでいいのよ
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