サンクチュアリの傷口に/紫音
 
踏破したことがない土地が消え
あまつさえ月を足蹴にし
フロンティアが昨日の彼方へ押しやられ
生き物を設計図ごと書き換え
あらゆる場所を舗装し
センス欠乏症のデザイナーズマンションに住む
賢い人たちは
次のフロンティアに侵蝕する

最後の果実
禁断の誘惑
開拓するのは
それぞれの魂

心の障壁は呆気なく解体され
禁じられた遊びは解禁され
無邪気に引っ掻き回し
飽きるまで繰り返しやってくる

神聖にして不可侵なものは
その弱さをさらけ出し
容赦なく打ち寄せるのは
焦げ臭い日焼けの痛み

神は死んだと叫ぶ前から神は死んでいた

心を覗かないでと叫ぶ前から心は裸にされていた


それは
アメーバのように執拗に
音も立てずに
わたしを消化する
ただここにいる
それだけの理由で

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