墓掘り/裕二
 
私は墓を掘る

吐く息も真夏の熱でどろどろになったイチゴゼリーのように重く
私の腕まわりは約1センチほど前の年よりも太くなった
そして顔のしわは約0・07ミリほど深くなった
かもしれない
そうかもしれないと風呂に入ったときに浮いてくるミトコンドリアの死骸を眺めながら思った

最近の墓は御影石でやたらと重い
チェーンで吊ってやっと下に降ろす 傷をつけないように
脇では
一人の老人が作業をじっと見守っていた
墓に入っているのはこの人の先立たれた妻なのだろうか

なぜこんな重い石をわざわざ置くのだろう
石は永遠を表すからだろうか




ああしかし

永遠は冷たく重い




私は墓を掘る

また私は生まれ変わるのだ
太陽のかけらを飲み込んで

人の声も鳥の鳴き声も金属の擦れる音のように
キーを打つ音もフレキシブルチェーンが回転する音も何かの話し声のように

きこえたら
また私は生まれ変わるのだ


私は墓を掘る
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