迷い  みどり/木立 悟
 



蒲公英
背の高い蒲公英
雀を追って降り立つ鴉の
姿を覆い
目を眩ませて
揺れる蒲公英



鴉 悲しいか
雀はいない
揺れる緑と緑の隙間に
わずかに震える渇いた土が
おまえには雀に見えたのだ



おまえが今まで喰らった命と
同じ数だけおまえは迷う
おまえは風と
土に迷う



午後は冷えて
物語は旋る
たくさんの歌
背に消えて
生まれ飛び立つ
鈴の手の歌
野に生まれ野となる
草の陽の歌



街にも森にも棄てられた地に
少しずつ緑は集まって
治らない傷をおさえている
流れ出るものに触れる手のひら
さまよいの歌をきざむはばたき
遠い光と
遠い会話のなかにかざされ
空をすぎゆくかたちを染める







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