河童/yo-yo
 

ひさしぶりに親父に会った
釣ったばかりの岩魚をぶらさげて
反りかえって山道を下りてくる
いつかの河童に似ていた

秋になると
川からあがって山へ帰ってゆくという
そんな河童を村人はセコと呼んだ

親父とはあまり話をしたことがない
だからセコが
勢子なのか背子なのか俺は知らない
ひたすら獣を追いかける勢子よりも
女子(おなご)に追われる背子のほうがいいと言うだろう
そういえば親父は
ときどき河童語をしゃべる

親父は俺よりも2センチ背が高い
肩幅も広いし脚も長い
山野と川原を駆けぬける河童の防人(さきもり)
草の匂いと水の匂いがする
きっと人
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