都市伝説/いとう
 
くあなただ
わたしではなく
あなたが震えているのだ

細やかなダイオードの束が
区切られた領域で明滅し
結びついた手と、手に、
一本の線を引く
すべてのわたしたちは意味をなくし
わたしとわたしではないあなた
そのような
嘘が
互いの咽元で豊潤に震え
闇に溶け込んだ
わたしとあなたの数だけ
汽笛となって増殖する

あの汽車は
夜になると動き出し
死にゆくものの前で
汽笛を鳴らす
葬送のための手と、手を、
ぎこちなくつなぎながら
わたしもあなたも
生きていないことに
まだ
気づいていない
ふりをしている


[グループ]
戻る   Point(22)