都市伝説/いとう
くあなただ
わたしではなく
あなたが震えているのだ
細やかなダイオードの束が
区切られた領域で明滅し
結びついた手と、手に、
一本の線を引く
すべてのわたしたちは意味をなくし
わたしとわたしではないあなた
そのような
嘘が
互いの咽元で豊潤に震え
闇に溶け込んだ
わたしとあなたの数だけ
汽笛となって増殖する
あの汽車は
夜になると動き出し
死にゆくものの前で
汽笛を鳴らす
葬送のための手と、手を、
ぎこちなくつなぎながら
わたしもあなたも
生きていないことに
まだ
気づいていない
ふりをしている
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