やどかり不動産/あおば
我が町の
奇商組合員の中には
やどかり不動産もいて
地見屋のように日がな一日
干潟を歩く
歩くついでにゴカイでも掘ればよいのに
目を皿のようにして
宿のないヤドカリを探す
着物をはぎ取られたネズミ男のような
宿無しのヤドカリは
滅多に見つけられるものではない
形の良いかしぱんでも拾って
お土産屋に卸せばよいのにと思うのだが
先祖代々の稼業は神聖のようで
わき目もふらない
運良く
宿無しヤドカリを探し当てたときは
脱兎の如く駆け戻り
ご丁重に
お客様をご案内してと
一言告げてあとは知らん顔
難しい顔をして
契約書の用意をするのを怠らない
どう考え
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