左川ちかアーカイブス/佐々宝砂
 


 左川ちかのことを知ったのは、私が二十歳くらいのときだ。当時私はマヤコフスキーに熱狂していた。それで、金もないのに西武美術館でやっていたロシア・アヴァンギャルド展を観るために上京した。そのとき、神田の本屋に立ち寄って、「幻想文学」という雑誌を見つけて買った(余談だが、私はこれ以後ずーっとこの雑誌を愛読していた。しかし残念ながら休刊してしまった)。雑誌の特集は「夢みる二十年代」・・・そのなかに、尾崎翠や野溝七生子の名と並んで、ほんの少しだけ左川ちかの紹介があった。モノクロの肖像写真と、詩が2編と、評論、あわせてわずかに3ページ。

 しかし、何かを好きになるのに、たくさんの情報はいらない。
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