誤読/後期
 
私は誤読されるために書いている。

 そう言うと編集者は困った顔をする。
「いや、できれば正確に読まれたほうが……」

 正確とは何か。

 私は三百枚の原稿を書いた。主人公は爆弾魔で、最後に世界を救う。だが読者の半分は「反戦小説」だと言い、残り半分は「暴力礼賛だ」と怒った。中には「純愛もの」と評した者もいる。

 私はどれも否定しなかった。

 なぜなら、全部当たりだからだ。

 作品は作者の意図で完結しない。読者の脳内で再構築されて初めて起動する。つまり読者は共犯者だ。誤読とは、共犯行為の別名である。

 私はある実験をした。

 小説の冒頭にこう書いた。

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