ある息子の一生/ばんざわ くにお
浪三浪四浪五浪
息子の不合格は果てがありません
不合格の年月を重ねました
そして
息子が六十歳の時に
重い精神病になり
精神病院に入院しました
失意の入院です
ところが入院してみると
まんざら精神病院も
悪くありません
同じ病の人と話ができて
知り合いができました
病院内では働く必要がなく
受験勉強する必要もありません
まるで天国のようではないかと
息子は思いました
この病院にいる時が
人生で一番
おだやかで幸せなときではないか
あの受験勉強で疲労困憊した日々は
いったいなんだったのだろうか
やっとたどり着いた安住の地で
息子は
人生の最
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