一人の窓辺/櫟 伽耶
 
窓越しに愛を囁いていた
この言葉はきっと風が運んでくれると信じて

手に触れるのはコンクリートの冷たさ
触れ続けて やっと
返ってくる温もり
それは 自分の暖かさ

この窓の外には
お話のような悲劇はたくさん転がっているのに
お伽話のような幸せはどこにもないから

きっと ここで静かに眺めているのが一番幸せ

たくさんの人の笑顔を
       笑い声を

あまりに近くで見てしまったら きっと私は嫉妬してしまうから

静かに微笑んでいたい

だけど どうしようもなく寂しい
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