二度童子の魂を運ぶ白鳥の話  三.白鳥の舞いと光/板谷みきょう
 
胸の奥で、母に抱かれて聞いた古い子守歌が、
ひっそりと目を覚ましました。

「ああ、あの橋が消えるとき、わたしの役目も終わるのだわ」

やがて虹が暮色に溶けると、空には七つの星が、
金色の柄杓の形をしてまたたきました。

星の光をすくうようにして、
一羽の白鳥が音もなく降りてまいりました。

白鳥はおばあさんの前に跪き、雪のような羽を広げました。

おばあさんは樫の杖をそっと置き、
震える手でその羽に触れました。

触れた瞬間、背負ってきた長い歳月の重みが、
するりとほどけていきました。

病んだ足の痛みも、
忘れ去られた物語の寂しさも、
すべてが光の中に溶けてゆきます。

「……長い間、ありがとうございました。
わたしの光は、もうここには必要ありませんね」

おばあさんは潔く、白鳥の背に乗りました。

白鳥はおばあさんを乗せ、夜空へ羽ばたき舞い上がりました。
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