二度童子の魂を運ぶ白鳥の話  二.水面に揺れる物語/板谷みきょう
 
おばあさんは村の子供たちが大好きでした。

かつて語った「カチカチ山」や「一寸法師」は、
子供たちの夢の灯火でした。

けれども今、おばあさんの話は
水面に浮かぶ木の葉のようにゆらゆら揺れ、
どこかへ流れていってしまいます。

「ねえ、おばあちゃん。今日のお話は、どこへ行ったの?」

子供たちが首をかしげると、
おばあさんは夕焼けの空を指さして微笑みました。

「さあねぇ、新しい光に追われて、
虹の向こうへ隠れてしまったのかも知れんね」

自分の物語がもう誰の役にも立たないことを、
子供のような澄んだ心で、静かに悟ったのです。

ある夕暮れ、雨上がりの空に、
見たこともないほど立派な虹の橋が架かりました。

子供たちが水たまりを跳ねて喜ぶ中、
おばあさんは窓辺に立ち、その虹をじっと見つめました。

それは、かつて村を照らした古い物語たちが、
最後に放つお別れの光のように見えました。
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