いた。/後期
れる音はしない。
ただ、内側で繊維がほつれる。
切れない刃物ほど、
己を正当化する道具はない。
俺は怒っていない。
悲しんでもいない。
ただ、少しだけ、
自分の位置が分からない。
こいつの位置が大幅に、
変わったからかも知れない。
布が乾く。
匂いが薄れる。
夜になる。
布団に入ると、またあのぬるさが戻る。
逃げ場がない。
目を閉じる。
誰の?
俺のもだ。
今日も何も起きなかった。
誰も傷ついていない。
俺も傷ついていない。
表面上は。
それなのに、
胸の奥で、
ごく小さな裂け目が
静かに、確実に、
人型の穴になっていく。
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