Air/
岡村明子
二人の発する熱が外気に触れるたび
むしろ私たちは錆びていった
今日また冬が来て
往来を人々が歩いている
いい天気ですね
いい天気ですね
ひとり口をついて出た言葉に
どうしてか
立ちつくして
あの日の風船はまだ宇宙の軌道を回っているだろうか
はじまってしまったあの日に
やりなおしましょう
と書いた紙をひもにつけて放っていたなら
今日あたり空からしぼんだ風船が落ちてきたかもしれないのに
おしまいの言葉はどうしてもみつからない
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