おじいさんのクリスマス/板谷みきょう
 
ささやきました。

「……そうか。では、鏡を見てごらん」

おじいさんは、驚いて古い鏡をのぞき込みました。

そこには、今にも消えてしまいそうな、
小さな、けれど誇らしげに咲く一輪の花が、
おじいさん自身の胸に咲いていました。

「……わしの、胸に?」

おじいさんが問いかけても、
光はもう何も答えませんでした。

おじいさんは、
自分の胸の花を見つめたまま、
やがて深い眠りにつきました。

その横顔は、とても穏やかでした。



翌朝、町の人たちは気づきました。

時計屋の明かりが、もう灯らないことに。

広場のツリーは片づけられ、
新聞の記事も新しい話題に変わりました。

けれど、あの日時計を直してもらった子どもは、
駅前広場の時計塔の下で、自分の時計を耳に当てました。

カチ、カチ、カチ。

「……まだ、動いてる」

その子は、自分の胸をそっとさわりました。

雪は、静かに降り続いていました。

駅前の時計塔は、今日も変わらず、時を刻んでいます。
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