位置/後期
 
気がつくと、そこに立っている

誰に言われたわけでもない
合図もない
だが、前任者が退いた瞬間
床の上に薄い印が浮かび上がる

そこだ

立っているだけでいい
見ているだけでいい
触れない
変えない
ただ、位置を保つ

最初は違和感がある
なぜ自分が
なぜ今
なぜここ

しかし問いは長く続かない
位置に体温が移ると
疑問は義務に変わる

役割は人を必要としない
空白を嫌うだけだ

去った者の名は
すぐに思い出せなくなる
声も、癖も、笑い方も
だが、その「位置」だけは
誰の記憶よりも正確に残る

やがて気づく
自分もまた
個人としてではなく
配置として数えられていることに

逃げようとする
だが、逃げるという動作さえ
あらかじめ想定されている

戻る場所が
用意されている

そしていつか
次の誰かが来る

自分が退いた瞬間
その人は
少し驚いた顔で
同じ場所に立つ

私は思い出されない
だが、位置は続く

それで十分なのだと
どこかで決められている

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