ユウスケの御託/田中教平
書斎は寒かったが、ユウスケは籠城を決め込んで小説を書く事にした。何が彼をそうさせるのか分からない。しかし、ここ数日、彼は小説の習作ばかり書いていた。しまいには昨日、ブックオフで小説を十冊ほど買い込んできた。湊かなえ著『人間標本』というミステリー小説は妻への手土産で別に買った。妻のカナは『人間標本』の扱いに困った。ミステリーが苦手、だったのである。その代わりに彼女は、田中慎弥著『孤独に生きよ』をくりかえし、くりかえし、スマートフォンで言葉の意味を調べつつ読んでいた。ユウスケは孤独を肯定する内容と、どこか自己啓発本に近しい内容がカナの求める所だったのだ、と想像した。
カナは自己啓発書を好
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